地方空港 放任体質に厳しい視線(産経新聞)

 昨年7月、国土交通省は、国が管理する全国26空港の平成18年度収支の試算結果を公表した。空港個別の収支が開示されたのは、これが初めてだった。

 国管理空港の収支は、社会資本整備事業特別会計の空港整備勘定(旧空港整備特別会計)で一括管理されている。公表に踏み切った背景には、黒字空港のもうけで赤字空港を補完しているにもかかわらず、個別の収支が不透明という“放任体質”への厳しい視線があった。

 同勘定の歳入のうち、空港ごとの算出が困難な収入(一般会計からの受け入れ財源)を除いた試算結果によると、黒字は大阪国際(伊丹)、札幌(新千歳)、鹿児島、熊本の4空港のみ。赤字幅では、空港用地の賃借料負担などが重い福岡の67億900万円、那覇の54億7200万円のほか、新潟の23億900万円、大規模な整備事業が進む東京国際(羽田)の20億1800万円などが目立った。

 一方、学識者らでつくる「航空政策研究会」は昨年5月、離島などを除き、自治体管理を含む全国41空港の収支(17年度)を独自にまとめた報告書を公表。これによると、9割以上の空港が赤字と判定された。

 「収支がオープンになっていない点が一番の問題だった」。調査に参加した関西学院大教授の上村敏之は「赤字と黒字をはっきりさせ、赤字空港を支援するために建設的な議論を行うことが必要だ」と話す。

 本来、空港の収入は、着陸料などの「航空系」と、ターミナルビルのテナント料などの「非航空系」の2本柱で構成される。世界の名だたるハブ空港では、非航空系収入の比率を上げ、極力着陸料を下げて就航を呼び込む手法が主流だ。

 ところが日本の地方空港の場合、上物であるターミナルビルは第3セクターなどのビル会社が経営しており、施設貸付料が安いために下物の空港本体の経営を圧迫、かつビル会社は潤っているという構造的な問題点が指摘されている。

 国交省によると、19年度は国管理26空港のターミナルビルを運営する38社のうち、8割強の32社が黒字経営で、剰余金を積み上げると2264億円に上ったという。

 「空港の運営自体は赤字で、こういった施設(ビル会社)が黒字で巨額の剰余金を生んでいるというのは、誰がどう考えてもおかしい」。昨年11月、この数字を公表した国交相の前原誠司は貸付料引き上げの方針を打ち出す一方、今月5日の衆院予算委員会では、引き上げ分を着陸料引き下げの原資する考えを示した。

 「そういうふうに言われると、従わざるを得ない」と、伊丹の空港ビル運営会社「大阪国際空港ターミナル」(大阪府豊中市)の広報担当者。同社の平成20年度の純利益は約3億5千万円、剰余金総額は約210億円に達している。

 空港ビル会社をめぐっては、もう一つ問題点がある。国交省などによると、38社の役員のうち、5%にあたる11人が国交省OB。自治体管理空港のビル会社は、出資者の自治体から退職した職員の受け皿になっている実態が指摘される。

 ある空港ビル会社の担当者は「出資者を受け入れ、経営をリードしてもらうのは当然だ。情報源としてもしっかり働いている」と意義を強調する。これに対し、航空系と非航空系収入の一体化に関する議論も進める国交省・成長戦略会議の委員の一人は「天下り先を増やすために、ビル会社を持っているようなものだ」と厳しく見つめる。

 “子”である空港ビル会社のもうけが回らず、“親”の空港本体を圧迫し続ける構図。日本の空港経営が根本に抱える負のスパイラルだ。委員が指摘する。「非航空系は航空系があってこそ。なのに、空港ビル会社は好条件の天下り先になっている。どうすればこの状態を動かせるのかという議論が必要だ」

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